「LOBSTER」オフィシャルロングインタビュー公開。

―まずはyonawo結成の経緯を教えてください。もともとは荒谷くんと斉藤くんが中学時代に同じサッカーのクラブチームに所属していて、友達だったそうですね。

斉藤:2人とも音楽が好きで、カーペンターズとかビートルズをよく聴いてて。

荒谷:ビートルズの話ができる友達なんて他にいなかったから、雄哉に最初「音楽何聴くと?」って聞いて、「ビートルズとか聴く」って言われたときは、「え!」と思って。自分はそんなに詳しくなかったんですけど、雄哉の家にはレコードがいっぱいあって、ギターもピアノもあったから、「教えてよ」って。

斉藤:両親が楽器をやってて、父親は若いころメジャーでやってたみたいです。当時は中学生だからギターもそんなに弾けなかったけど、荒ちゃんと即興でメロディーを作ったりはしてて。

荒谷:その頃から曲を作ってみたかったんです。でも、作り方がわからないから、それまではアカペラで歌ったのをボイスメモに入れてたんですけど、雄哉にコードを教えてもらって、そこからギターで曲を作るようになって。最初に教えてもらったのは、エリック・クラプトンの“Tears In Heaven”だったんですけど。

斉藤:そのうちオアシスとかにハマって、コードがわかるようになって。その頃ベースを弾いてたのが、僕の幼馴染で、サッカーチームでも一緒だったヨナオくん。その後にいまの4人になって、バンド名を「yonawo」にしたんです。

 

―高校は2人別々の高校に行って、まず斉藤くんと田中くん、野元くんが仲良くなり、荒谷くんとも一緒に遊ぶようになったそうですね。

斉藤:俺一回高校やめて、入り直してるんです。そこで最初に仲良くなったのがのもっちゃんで、共通の友達から「あいつフー・ファイターズ好きらしい」って聞いて、「そんなやつおるんや!」と思って、話しかけたら、最初めちゃめちゃ引いてて(笑)。

野元:エレベーターで視線感じて、めっちゃ怖かった(笑)。

斉藤:で、のもっちゃんがドラムで入ってくれることになって、最初はヨナオくんがベースだったんですけど、学年が一個上だったから、受験でだんだん集まれんようになって。で、荒ちゃんも先に卒業したんだけど、一年ちょっとワーホリでバンクーバーに行ってたから、帰ってくるタイミングで俺らも卒業して、その前に慧に「ベースやってよ」って話をしてて。慧はもともと別のバンドでギターボーカルをやってて、ジャンルもめっちゃロックだったんですけど。

田中:荒ちゃんが弾き語りで歌った曲を聴いて、いい曲だなって、グッと来たんです。だから、「ベースがやりたかった」というよりは「入りたいバンドにベースがいなかった」っていう方が近くて。

 

―音楽が共通の趣味だったけど、もともと4人は普通に友達だったわけですよね。当時ってどんなことで遊んでましたか?

荒谷:とりあえず集まって、各々好きなことをする、みたいな感じだった気がする。音楽聴きたいやつは聴いて、絵書きたいやつは書いて、ギター弾きたいやつは弾いて、スケボーやりたいやつはやって……。

田中:ホントそう。みんなが集まる公園があって、そこにとりあえず集まって、みんなで一緒に何かするわけじゃなく、各々何かに没頭するために集まるっていうか……みんながおる場所で、自分の好きなことするのが至福やった(笑)。

荒谷:でも、今もそんな感じやな。場所が公園から雄哉の家になっただけで。

 

―メンバーそれぞれの音楽的なバックグラウンドについても知りたいです。荒谷くんはもともとビートルズ、カーペンターズ、オアシスなどを聴いていたそうですが、日本語の歌を歌うようになったのはいつからなのでしょうか?

荒谷:中高くらいまでは適当に英語で歌ってて、ストロークスとかアークティック・モンキーズとかが好きだったんですけど、ヨナオくんは邦楽にも詳しくて、はっぴいえんどの“風をあつめて”を教えてくれて、「むちゃくちゃいいやん!」と思って。耳触りも良かったし、風景も浮かぶし、スッと入ってきて、自分も日本語で書いてみたいと思いました。あとは、東京事変も教えてもらって、そこからペトロールズとかも聴くようになって、コードもいろいろ知って、作る音楽の幅も広がって行った感じです。

 

―斉藤くんの音楽歴は?

斉藤:僕も最初はオアシスとかUKロックが好きで、そこから東京事変とかペトロールズを聴いて、メジャー7thとかにハマって、ジャズを聴いてみたり。あとは、ストロークスの『ANGLES』とかレディオヘッドの『OK COMPUTER』とかを聴いたときに、「なんじゃこりゃ?これもうバンドじゃないな」ってなって、そこから打ち込みとかにも興味が出て、ダフトパンクにハマったり、サンプリングされてるジャズとかR&Bにも興味を持って、その頃から自分が弾くギターの感じも変わってきましたね。

 

―高校卒業後は、専門学校のレコーディング専攻に進んだんですよね。

斉藤:高校のときに作ってた曲をCDにしたくて、パソコン買って、ロジックで家でレコーディングをして。そこから録音に興味を持って、学校に通うことにしたんです。

 

―田中くんはもともとギターボーカルで激しめのロックをやっていたとのことですが。

田中:僕もアークティック・モンキーズとかストロークスは今でも好きだし、当時はニルヴァーナとかヴァインズとかも好きで、もともと暗めの音楽が好きみたいです。最近だとポーティスヘッドにハマって、ジェイムス・ブレイクとか、ボーズ・オブ・カナダとか、ああいうちょっと暗くて、メランコリックなエレクトロもすごく好き。スティーヴ・レイシーとかレックス・オレンジ・カウンティも好きですけど、「ジャンルで聴く」というよりは、ちょっとダークというか、哀愁のあるものが好きなのかもしれないです。

 

―野元くんもバンドはもちろん、エレクトロニックな音楽も好きみたいですね。

野元:ドラムは高校からで、慧と一緒にバンドをやってたので、僕も最初はオルタナティヴなロックとかが好きで。ドラムのフレーズにしても、アークティック・モンキーズの『AM』みたいな、ハードでシンプルなフレーズが好きだったんです。そこからの変化としては、サカナクションが大きくて、姉ちゃんのCDを聴いて、「ヤバい!」ってなって、電子音の良さを知って、ダフトパンクにハマったり。高校の頃はBeatwaveっていうアプリでエイフェックス・ツインみたいなトラックを作ってて、yonawoでもパッドを使ったり、打ち込みを入れるのもアリだなって思ってます。

 

―イラストも昔から書いてるんですか?

野元:もともと絵が大好きで、一時期は美大を目指そうかとも思ってました。一回ハマると、飽きるまでひたすらやってしまう性質で、前はスケッチブックがたまって行くのが好きだったり、動画編集とかも好きで、今はイラストもiPadで書くことが多いですね。

 

―yonawoの音楽性のベーシックはどのように作られて行ったのでしょうか?

斉藤:もともとは荒ちゃんの弾き語りをみんなで追っかけるっていうか、半分セッションみたいな感じ。当時荒ちゃんはギターボーカルで、キーボードを弾き始めたのは2019年のアタマくらいかな?バンドを始めた頃から、「キーボードおったらいいよね」って話はしてて、ライブしてても、やっぱり鍵盤の方が曲に合うから、「荒ちゃん弾いたら?」って。

荒谷:最初のEP『ijo』で初めて「アレンジを固める」ってことをして、“しあわせ”はわりとすんなりできたけど、“ijo”はお手上げだった(笑)。で、次の『SHRIMP』はiPadを使って一人で全部作って、あれはデモみたいなものというか。最近は自分がガレージバンドでデモを作って、それをみんなで聴いて、そこから作る方が早いですね。

 

―EPを宅録で作ることに関しては、特別何か意図があったわけではない?

斉藤:「スタジオで録る」っていう考えがそもそもなくて、「音源は家で作るもんっしょ」くらいの感じ。「レコーディングスタジオに入る」っていう発想はなかったかな。

野元:スティーヴ・レイシーとか流行ってたしね。

斉藤:ローファイヒップホップとかにもハマって、「インディーズは家で作るもん」くらいに思ってたから、「レコーディングスタジオを使うのはプロ」みたいなイメージ。でもライブはしたいし、バンドで合わせるのは楽しいから、ライブと音源は分けて考えてましたね。

 

―現在マネジメントを手掛けるbud musicとの出会いがバンドにとって最初の転機になったかと思いますが、どういった出会いだったのでしょうか?

斉藤:2019年の3月に、共通の知り合いから「番下さん(bud music主宰)って人が会いたがってる」って言われて。その2~3日後には福岡に来てくれて、ジャズ喫茶みたいなところで初めて会って、30分くらい話して、気づいたら「お願いします」って握手してました(笑)。他の人にもちょこっと会ったことはあったんですけど、そのときは仲介の人もいなかったし、変に警戒してて。でも、番下さんは「この人いいぞ」って思って。それから東京だったり、県外のライブも増えていきました。

 

―さらには、ワーナーとの出会いがあったわけですよね。

斉藤:ワーナーの阿木さんが東京からライブを観に来てくれて、最初から契約の話とかをしたわけじゃなく、「川谷(絵音)くんから教えてもらったんだけど、かっこいいね」みたいに言ってくれて。

田中:「メジャーっていうのはこういうもの」って教えてくれた感じ。その頃はレーベルと事務所の違いもよくわかってなかったんで。

 

―ちなみに、メジャーデビューへの憧れってありましたか?

斉藤:ほぼない(笑)。

荒谷:「メジャーデビュー」っていう概念もよくわかってなくて、「華やかなんやろうな」くらい(笑)。ただ、俺らみたいなインディーズっぽい音楽が、メジャーでどれくらいやれるんだろうっていうのは面白いなって。声をかけてもらえたのはもちろんありがたいし、「俺らの音楽が認められたんだな」っていうのは純粋に嬉しかったです。だから、挑戦的な部分もあるというか、自分たちの素のままで、どれだけ勝負できるんだろうっていうのは、今まさに考えてるところですね。

 

―ファーストミニアルバム『LOBSTER』はスタジオ録音で、EPの収録曲の再録や、昨年配信されたデジタルシングルの楽曲含め、これまでの集大成的な作品になってますね。

荒谷:奈良のMORGというスタジオに一週間泊り込んで録りました。最初のミニアルバムだから、一回ちゃんとしたスタジオで、バンドサウンドで録ってみたかったんです。

斉藤:レコーディングって大変なんだなって思いました。締め切りの決まってるレコーディングは初めてだったんで、楽しかったけど、緊張感もありましたね。いつもだったら、行き詰まるとビール飲んじゃうんで(笑)。

 

―収録曲について、一曲ずつ解説をしてもらいたいです。一曲目は“矜羯羅がる”で、今ではバンドの代名詞的な一曲になっていますね。

荒谷:もともとは高校生のときに書いたんですけど、それを『SHRIMP』を作るタイミングで掘り起こして、ドラムとベースをつけて、キーボードも入れて、形にして。それを最初雄哉に聴かせて、「デモ作ったから、みんなで録り直さん?」って言ったら、「このままでいいっちゃね?」って言われて、「え?」って思いつつ、雄哉が言うならいいかと思って。

 

―アレンジの良さはもちろん、曲そのものの力があったっていうことでしょうね。さらに、今回のバージョンにはトランペットが入っているのも特徴で。

荒谷:EPとはちょっと違う雰囲気にしたいと思ったときに、チェット・ベイカーとか好きだから、ああいうムーディーな雰囲気にしたくて、入れてもらいました。

 

―歌詞も面白いですよね。タイトルの字面からしてキャッチーだし。

荒谷:これを作ってた頃、こんがらがってたんだと思います(笑)。でも、若いからこんがらがってたってわけでもなく、ずっとこんがらがり続けるものだと思うんですよね。それを受け止めて、共存していくことが、年を取って行くことなのかなって初めて気づいて、「あ!」と思って、書いたような気がします。

 

―2曲目の“ijo”は音像が打ち込み寄りですよね。

荒谷:これはEPからアレンジはほとんど変わってなくて、ベースが最後に動くくらい。ループの感じを残しつつ、音をもっとかっこよくしたっていうか。

斉藤:もともとロジックのドラムだったから、ちゃんとアップデートしたくて、生ドラムに差し替えました。

野元:音作りは結構大変で、エンジニアさんと話しながら、30分くらいずっとチューニングしてましたね。

荒谷:ボーカルはEPのときの声と、今回歌い直したのを重ねてます。BPMはそんなに速くないけど、意外と踊れるので、こういう曲がフロアで流れたら面白いなって。

 

―3曲目の“しあわせ”は今作の中では最もジャズ寄りのアレンジだなと。

荒谷:プリプロで東京のスタジオに入って、「一回合わせてみる?」ってパッとやって、そこから広げて行きました。

斉藤:最初「すげえゆっくりやってみよう」ってやって、「これはやり過ぎ」ってなって、またちょっと上げたりして。最初めっちゃ音を削って、抜けるだけ抜いて、テンポが上がってから、またいろいろ入れてみたって感じ。

 

―「基本的に音数は少なく」っていうのは、バンドとして意識していること?

荒谷:聴いてる音楽がそうやけん、勝手にそうなるというか。歌が真ん中にあって、その周りをハメていく感じなのかな。

 

―4曲目の“26時”は唯一の未発表曲ですが、2018年には原型があって、ライブでもやっていたそうですね。

荒谷:でも、プリプロで結構変わって、ノリは前と全然違います。

田中:もともと僕がリフっぽいベースラインを作って、やってみたら「いいね」ってなって、リフ主体な感じになって。

斉藤:で、今回のプリプロで「跳ねさせよう」ってなって、それがハマった。

荒谷:ノリがヴルフペックの曲にありそうで、こういうノリなら管楽器入っててもいいかもって。ヒップホップも好きやから、ラップも好きだし、メロディーももっと遊びたい。詰めてもいいし、抜いてもいいし、自由でいたいなって思います。

 

―yonawoの楽曲は基本BPM遅めで、ゆったりした曲が多いわけですが、「踊れる」っていうのも意識の中にはありますか?

荒谷:“26時”を作ったときは「アップテンポの曲が一曲あってもいいかな」くらい?

田中:the perfect meのライブで、俺らめっちゃ酔っ払って、踊りまくったのが楽しくて、「こういうの作りたいね」って言った気がする。

 

―「踊らせる」というよりは、まず自分たちありきな感じだ。

荒谷:自分たちが楽しければ、お客さんも楽しいんじゃないかって発想ですね。自分が後付けになることはないと思う……そうなっちゃわないように気をつけたいです。

 

―5曲目の“Mademoiselle”と6曲目の“ミルクチョコ”は、昨年末にデジタルシングルとしてリリースされた2曲ですね。

荒谷:“Mademoiselle”は自分で完結させるのが嫌で、4人でスタジオに入って作りました。コードだけ持って行って、慧がベースをつけて、ドラム入れて、ギター入れてって感じ。スタジオで即興な感じで歌い出しを作って、この感じで一曲作ろうぜって。“ミルクチョコ”はもともと同じコードで別の日本語詞曲があったんですけど、英語にしたら「いいやん」ってなって、そこからみんなでアレンジを考えて。

野元:イエロー・デイズとかを聴いてた時期で、ドラムのフレーズはゆったりと、あんまり何もしない、みたいな感じ。サンセット・ローラーコースターとかも聴いてたかな。

 

―イントロとアウトロの合唱も印象的です。

荒谷:一回英語だけで完結してたんですけど、何か物足りないと思って、イントロに思いつきで歌を歌ったら、「いいんじゃね?」ってなって、最後にも持ってきて。

斉藤:イントロだけ日本語だから、雰囲気を変えたくて、荒ちゃんがシンセベースを入れて、「めっちゃいいやん!」ってなって。で、声も変な感じにミックスしました。

 

―歌詞は特別「メッセージ性がある」みたいな感じではないと思うのですが、どんなことを意識して書いていますか?

荒谷:ひとつ面白いワードとか、誰かの面白い発言が頭に残ってたら、そこから世界を広げるというか、新しい世界を作るような作業をしてるのかなって。自分にとっても未知なものが面白くて、自分でも解説できないようなものが素敵だと思う。作り手さえ知らないんだから、誰が解説しても違う受け取り方になるだろうし、それがまた面白いなって。

 

―「新しい世界を作る」っていうのはちょっとわかるというか、特に“Mademoiselle”や“ミルクチョコ”はジブリとかにも通じるような、SF御伽噺的な世界観がありますよね。

荒谷:ファンタジー要素もあるけど、軸にはリアルがあってほしいと思ってます。でも、作ってるときは結構空っぽなんですよね。音楽じゃなくても、何か作品に触れて感動するのって、空っぽのときだと思うんです。僕もそういうときに歌詞を書くから、空っぽの状態で聴いてもらったときに、感じるものがあればいいなって。

 

―『LOBSTER』というタイトルは『SHRIMP』からの連続性を感じさせますが、どんな意味があるのでしょうか?

斉藤:俺らが入ってる福岡のリハーサルスタジオの部屋の名前が「SHRIMP」と「LOBSTER」なんです。前は小さい方の「SHRIMP」に入ってたんですけど、最近は大きい方の「LOBSTER」に入ってるから、今回は『LOBSTER』。もともと『SHRIMP』を作った段階で、「次は『LOBSTER』にしたいね」って話をしてたんです。

 

―では最後に、バンドの将来像についてはどう考えていますか?

斉藤:……長く続けられればいいんじゃない?

荒谷:それはそうだね。ただ、こういう音楽をメジャーでできるっていう意味では、大きくなるってことにも意味はあると思うから、リスナーを巻き込めるようなバンドになれたらいいなとも思います。

 

―自分たちの思う「成功」のイメージってありますか?

荒谷:音楽を作ることに関しては、「成功/失敗」っていう概念からは遠いところで作りたいです。ただ、バンドとしては、多くの人に聴いてもらえる状態で長く続くことが一番嬉しいし、成功だと思えるのかなって。あとは、はっぴいえんどみたいに、バンドとしても活動しつつ、各々好きなことができたら理想ですね。のもっちゃんは絵や動画編集も好きだし、雄哉はエンジニアも好きだし、慧はかき鳴らす系の音楽性も持ってるし、それぞれのパーソナルな部分も広げながら、バンドとしても大きくなれたら一番いい。

 

―高校時代に集まっていた公園のような状態のまま、素のままで大きくなれたらいいですよね。

斉藤:確かに、それは理想的だなあ。

 

Interviw & Text by 金子厚武